薄毛になってしまう症状にはAGA(男性型脱毛症)や円形脱毛症などいろいろなものがありますが、糖尿病を発症してしまうと薄毛の原因に。
キャスターの小倉智昭さんが糖尿病で薄毛になってしまい、カツラのお世話になっていることは有名ですね。
なぜ糖尿病が原因で薄毛になってしまうのか、糖尿病にならないためにはどのような対策が必要なのかなどについて、説明していきましょう。
糖尿病の発症 原因は「血糖値」のバランスの崩れ
糖尿病にも自己免疫性疾患である1型と、生活習慣が原因で発症する2型があります。
若年層で発症することの多い1型は生活習慣とは関係ありませんので、ここでは2型について話を進めていきましょう。
甘いものやデンプンなどの糖質を摂取すると、血糖値が上昇します。
必要以上に血糖値が上昇しないようにするために、膵臓からインシュリンというホルモンが分泌されています。
正常な状態では、このインシュリンが効果を発揮して血糖値を抑えているのです。
糖質を摂取しすぎたり、お酒を飲みすぎたりすると、血糖値を抑えるために大量のインシュリンを分泌しなければなりません。
インシュリンの大量分泌を繰り返すと膵臓がうまく機能しなくなり、インシュリンを分泌することができなくなります。
その結果、血糖値が必要以上に上がってしまうのが糖尿病です。
弘世貴久・東邦大医学部教授は、日本人は膵臓のインシュリン分泌能力が高くないため、この発症パターンが多いと説明しています。
また、太っている人や高血圧の人は、インシュリンが正常に分泌されていても血糖値が下がらなくなることがあります。
これをインシュリン抵抗性といい、こちらも糖尿病の原因です。
東邦大医学部の弘世教授は、膵臓のインシュリン分泌機能が高い欧米人は、この発症パターンが多いと説明しています。
「参考:MSD 糖尿病とは」
困るのは、糖尿病の初期はほとんど何の症状もないことです。
喉が乾いたり、尿の量が増えたりといった症状は、ある程度病状が進行しないと出てきません。
気がついたときには、重症化してしまっているケースも珍しくありません。
更に、糖尿病の本当の怖さは合併症にあります。
症状がないからといって放置しておくと、血糖値の高い血液によって血管が痛めつけられ、ボロボロになってしまいます。
<糖尿病発症時に考えられる合併症>
・糖尿病網膜症
眼球の中の血管が傷めば網膜症になり、失明の恐れがあります。
・糖尿病腎症
腎臓の血管が傷めば尿がうまく作れなくなって腎症になり、重症化すると人工透析が必要になってしまいます。
・動脈硬化
動脈硬化も血管が傷んだ結果、弾力を失って起きるもの
心筋梗塞や脳梗塞につながる恐れも。
中でも厄介なのが心筋梗塞です。
糖尿病の合併症のひとつに神経障害があり、痛みを感じにくくなっています。
心筋梗塞を発症しても痛みを感じないため処置が遅れてしまい、心臓が破裂するまで気が付かなかったという最悪のケースまであるのです。
このような合併症は、血管が傷み、血流が悪化して起こってしまうものです。
合併症を起こさないためには定期的に内科を受診し、食事や薬によって血糖値を安定させる必要があります。
栄養不足・血流悪化が招く「糖尿病」と「薄毛」のリスク
では、薄毛と糖尿病がどのように関係しているのでしょうか。
糖尿病によって血管が傷み、血流が悪化するという症状は全身で起こります。
そして、それは頭皮についても例外ではないということです。
毛根には毛母細胞があり、分裂を繰り返すことで髪の毛を成長させています。
そして、毛母細胞が分裂するためには、毛髪を成長させるための栄養分と、細胞分裂のエネルギーとなる酸素が必要になります。
ところが、糖尿病の影響で血行が悪化すると、毛根に十分な栄養分と酸素が届けられなくなってしまいます。
栄養分と酸素が不足している状態では毛母細胞の分裂も抑えられてしまうため、髪の毛がうまく成長しません。
成長せずしっかりと生成されない髪の毛は、細くなったり、十分に成長する前に抜けてしまったりと、薄毛の原因となってしまうのです。
毛母細胞の分裂抑制が薄毛の原因となる疾患としては、AGA(男性型脱毛症)があります。
男性ホルモン由来物質であるDHT(ジヒドロテストステロン)によって毛母細胞の分裂が抑えられるために起きるものです。
糖尿病の場合、血流悪化による栄養不足で似たようなことが起きているのです。
実際、頭皮の血流と頭髪の伸びには、密接な関係があります。
AGAの治療薬であるミノキシジルは頭皮の血管を拡張して血流を促進し、毛根に十分な栄養分と酸素を供給することで頭髪の伸びを促進するものです。
医療機関で処方されていることが、その証拠だといっていいでしょう。
糖尿病で起きていることは、まさにこの逆。
高血糖の血液によって痛めつけられることで血管がボロボロになり、血流が悪化してしまい、毛根への栄養分と酸素が減少しているのです。
一度ボロボロになった血管は、簡単には元に戻ってくれません。
血糖値をコントロールして血管が傷まないようにしない限り、どんどん悪化してしまうからなのです。
もし糖尿病になってしまったら、治療は一生にわたって続けなければなりません。
少しでも治療をサボるとすぐ悪化してしまいます。
ちなみに合併症については、1型であっても2型であっても同じように起こります。
一生にわたる治療が必要なのも同じです。
特に1型はインシュリンが全くといっていいほど分泌されなくなってしまううえ、生活習慣と関係なく発症するため、余計に厄介だといえるでしょう。
このあたりはプロペシアとミノキシジルをやめれば元の木阿弥になってしまうAGAに似ていますが、AGAの場合は放置しておいても毛根が死滅するだけで、命まで奪われるわけではありません。
糖尿病の場合は、放置していると本当に命取りになってしまうのが怖いところです。
もし最近、頭髪が全体的に薄くなってきたと感じており、生活習慣に何らかの問題を抱えているようでしたら、一度内科を受診してみることをオススメいたします。
糖尿病によって、薄毛が誘発されている可能性が否定できないからです。
糖尿病治療と薄毛改善に共通する「育毛のヒント」!
糖尿病は発症してしまうと完治しませんので、治療は「一生もの」となります。
治療法としては食事療法と運動療法、薬物療法があり、これらを併用して血糖値を安定させます。
血糖値が安定した後は、治療を続けながら定期的に内科に通い、健康状態をチェックしていきます。
そして、この食事療法と運動療法、薬物療法はすべて、育毛と何らかの関係を持っているのです。
一体、これらの治療がどのように育毛に関係しているのでしょうか。
<食事療法と育毛との関係>
糖尿病の食事療法は、気をつけるべきポイントが育毛とある程度共通しているんだ。
具体的な共通は3つ。
・糖質の摂取を抑制する
・緑黄色野菜を多く摂取する
・食事の際にはよく噛む
それぞれの点について、育毛にどの関係しているのか説明していこう。
✔ 糖質の摂取抑制
これはダイエットにつながるところがミソです。
肥満状態では血中の脂肪分が多いため、血液がドロドロになっています。
これは血流の悪化につながり、頭髪にとっては良くありません。
糖質の摂取量を制限すれば、必然的に摂取カロリーが減少しダイエットにつながります。
体内にたくわえられている脂肪が減少すれば、血中の脂肪の量も減り、血液がサラサラになります。
血液がサラサラになる=血行が促進されて育毛効果につながってくるというわけです。
また、血中の脂肪分が多いことは、動脈硬化による血流の悪化にもつながります。
糖質の摂取制限によるダイエットは血中の脂肪分の量を減らし、動脈硬化の進行を防ぐことにもつながるのです。
✔ 緑黄色野菜の積極的摂取
ニンジンやホウレン草など、100グラム当たりのβカロテンの量が600マイクログラムを超えるものを緑黄色野菜といいますが、βカロテンは体内でビタミンAとなり、頭皮の状態を整えてくれる効果があります。
頭皮の状態悪化は、頭髪にも悪影響を与えます。
ビタミンAの不足は皮脂腺に悪影響を与え、皮脂の不足や分泌過剰による頭皮の状態悪化を招きます。
緑黄色野菜を摂取することで、頭皮の状態を改善してくれるのです。
問題は、ビタミンAは脂溶性のため、過剰摂取の可能性があることです。
過剰摂取すると頭皮が硬化し、毛根の弱体化による脱毛の原因になってしまうためです。
ただ、これはあくまでも動物性のレチノールの場合です。
βカロテンは大量摂取しても、必要な分以外は吸収されませんので、ビタミンAの過剰摂取につながりません。
つまり、積極的に摂取しても頭皮に悪影響を与えることはありません。
緑黄色野菜にはこれ以外にもビタミンB2、C、Eなど育毛に良い影響を与えるビタミンを含んでいるものが多いです。
摂取カロリーを抑えながら育毛に励むことができます。
✔ 食事の際にはよく噛む
噛むことが糖尿病に有効だとされるのは、食事時間が長くなることが理由です。
早食いは急速に体内へ栄養分が取り込まれるため血糖値の上昇が大きく、インシュリンを分泌する膵臓に負担が大きいです。
よく噛むことで血糖値の上昇を抑え、膵臓への負担を小さくするというわけです。
よく噛むことは頭部への血行を良化させることにもつながります。
また、よく噛むことで大量の唾液が分泌されますが、唾液にはパチロンというホルモンが含まれています。
よく噛んで唾液を多く飲み込むことは、このパチロンを大量摂取することにつながるため、髪の成長促進にもつながります。
<運動療法と育毛との関係>
糖尿病患者は食後の血糖値を下げるため、軽い運動をすることが推奨されています。
育毛効果を発揮させるためにも、軽い運動をすることは効果的です。
運動をすることで、ストレスが解消されます。
ストレスを受けると自律神経のうち交感神経の働きが活発になり、頭皮などの末梢血管の血行が悪化し、育毛に逆効果に。
ストレスを解消することで、もうひとつの自律神経である副交感神経の働きが活性化し、血行が促進され育毛効果につながってくれるのです。
また、運動によって心肺機能が強化され、血流改善にもつながります。
血流が良化すれば毛根に十分な血液が送られるようになり、栄養分と酸素によって頭髪の成長が促進されるというわけです。
もちろん、運動にはダイエット効果もあり、血中の脂肪を減らしてくれます。
糖質摂取を抑える食事療法と同じで、血流を悪化の原因である動脈硬化防止の相乗効果が望めそうです。
<薬物療法と育毛との関係>
糖尿病の薬物療法においては、インシュリンそのものや、インシュリンの分泌を促進させる薬剤が処方されます。
この薬自体に育毛との関係はありませんが、気をつけなくてはならないのはAGAの治療を行っているケースです。
AGAの治療薬であるミノキシジルには、インシュリンの分泌を抑制してしまう副作用があります。
ミノキシジルはもともと、高血圧患者の血圧を下げるために血管拡張剤として開発された薬剤で、カリウムチャネルを開いて血管を弛緩させる効果があります。
問題は、カリウムチャネルを開くことは、インシュリンの分泌抑制につながってしまうことです。
特にインシュリンの分泌を促す薬剤を処方されている場合、効果が抑制されてしまいます。
糖尿病の治療にとっては、致命的ですね。
糖尿病とAGAの発症には関連性はありませんが、両方を発症する可能性はあります。
AGAの治療にミノキシジルを使用する場合、上記の副作用を考慮に入れ、医師の判断を仰いだ方が良いでしょう。
「糖尿病」の予防は「薄毛」の予防につながる!
2型の糖尿病は悪い生活習慣が原因となって発症します。
そして、糖尿病による血流の悪化は、薄毛の原因になってしまうのです。
糖尿病による薄毛を予防するためには、生活習慣を見直す必要があるのです。
糖尿病の食事療法は血糖値の上昇を防ぐものなので、糖尿病予防の参考にもなります。
そして、糖尿病の食事療法には、薄毛予防のヒントになる要素が入っています。
・糖質を摂りすぎない
・ビタミンA、B群、C、Eを摂取
(主に緑黄色野菜)
これを参考に食事のメニューを組み立てていけば、糖尿病と薄毛の両方を予防することもできます。

糖尿病は初期症状がほとんどないから厄介なんだ…
もし頭髪が全体的に薄くなってきたなと思ったら、糖尿病だけじゃないが、何らかの病気の前兆かもしれないぞ!
生活習慣を見直して思い当たる節がある時は、医療機関を受診してみような。
俺も気を付けないとな…もぐもぐ…